手づくりの店HANNAH
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お店の壁に飾ってある2枚のポストカード。

お店の壁に飾ってある2枚のポストカード。

2026/04/16

お店の壁に飾ってある2枚のポストカード。

一枚は、草の香りが漂うような景色の中にいる男の子。
二枚目は、青い背景の中にきらめく鉱物の写真。

どちらも思い出のカードで、
どこかに素敵に飾れる日を待って、
手紙と一緒に大切に仕舞っておいたものだ。

自分の家を持つことよりも、
自分の店を持つことを希望し続けた私には、
「素敵に飾れる場所」というのが必然的に店なった

「綺麗な写真ですね〜」と、
お客さんに時々話しかけられるので、

「男の子のポストカードをくれたのが、私が20代前半頃好きだった人。

で、こっちの青いポストカードが、その人の彼女からもらったやつ。」

と答えると、

「なんか切ない話が出てきそう‥」
と困った顔をされてしまう。

男の子の写真のカードをくれたミヤ君は、
偶然の出会いで、
詩とか映画、音楽の話しが共鳴し過ぎて仲良くなった人だった。

ある日

「見てこれ!」

と言ってくれたのがこのポストカードで、

「うわ素敵。
みて。これを壁にあてると、突然ここに窓が開いているみたいじゃない??」

と言って私はもらったカードで遊んだ。

無機質なビルの冷たい壁面にあてても、
居酒屋のタバコの煙漂う壁面にあてても
地下鉄の階段の途中の壁にあてても

写真の中の少年は
こちらまで新緑の香りが漂ってくるかのように
雨上がりの緑の中で清々しいしい呼吸を続けている

私達はポストカードを持ったまま、
壁にあてる遊びをしながら散歩した。

一緒にいなければ、
メールでお互いに創った物語の交換をしたり、
イメージや文章の共有をしたり、
後にも先にも現れない本当に貴重な友達だったと思う。

だいぶ後になってから、
これって好きなのかなぁ‥と思い始めたけど、
私はこういうことに気がつくのがすごく遅い。

仕事の帰りに偶然一緒に帰ったり、
今日はあれを観に行こうと約束したり、
色々な時間を過ごす中で、
たまに私が作ったお菓子をあげる時があった。

そんなに色々なものをあげた訳ではないのに、
ひとつの焼き菓子をあげた時の言葉が忘れられない。

「外山さんの造るお菓子は食べて終わりじゃない。
思い出しても味わえる、物語や芸術そのものだ。」

20代のときの私に
こんな事を言ってくれる人は他にいなかった。

30代でお店を持ってから、
「食べて終わりにならない」とか「芸術」だとか
言ってもらえるようになったけど、

ひとつの焼き菓子を食べて、
これほど私を捉えてくれていたことには
いま思い返しても感動する。

そのあと彼は、何年も後に躁鬱病になって連絡が付かなくなった。

「出会ってくれてありがとう」

そんな気持ちで男の子のポストカードを見つめると

「お店創ったら行ってもいい?
絶対感動して泣いちゃうと思うな〜」

と言っていた彼の言葉を思い出す。

ミヤ君の彼女は看護師だと聞いていたけど、
躁鬱病の彼と大変な思いはしていないか‥

それにしても私も悪気なく
彼女に不安な思いをさせてしまっていたとおもう。

当時の私は「この人に彼女がいるのかな?」なんて発想も無かったから‥

お店を持って、
ポストカードの飾り場所を吟味している時に
ふと気がついた。

男の子のカードの裏面にこう書かれている。

東京都写真美術館
日本の新進作家展vol.9 「輝きの瞬間」

そういえば、
この展覧会一緒に行きたいねって言っていたのに
行かなかったんだ。

でも小岩に初めて降り立ったのは、
小岩bushbash というライブハウスに
ミヤ君と一緒に出かけたときだった。

私のお店から小岩bushbashは徒歩10分以内。

偶然とはいえ
あの頃こんな場所にお店を持てるとは
思っても見なかった

私は2枚のカードを眺めて

探すともなく
2人のことを想い出している。

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